「家を建てる」「マンションを買う」「引っ越す」など、住まいの変更を検討した際に、家相や風水を気にする方は多いです。ただ両者は同じようで実は見解に違いがあります。同じように扱われやすく、混同した書籍もたくさんあり困惑している方も多いのではないでしょうか。

このページでは「周辺の環境や土地の形状を見るものが風水」「家の間取りや形状を見る日本独自の思想が家相」であること、また本来の家相の思想について解説していきます。

風水は周辺環境や土地の形状を見るもの

風水とは土地の吉凶を判断する思想

風水はいまから4000年前に、中国で発生した土地の吉凶を見る思想です。山、海、川など周辺の環境などを見て、気の流れからその土地の良し悪しを推測していく手法です。そのため、風水は地相を見るための理論という意味で、別名「地理」ともいわれます。

中国人は経験上、北に山があり南に平野が広がるような土地に、良い気が集まると考えました。このことを利用して都市開発を行い繁栄させてきました。

この思想を個人では、家や墓を建てる際に縁起のいい土地を探すために使用したのです。ご先祖様を良い状態でまつることで、現世に生きる自分たちが守られると考えました。そのため風水には家をみる「陽宅風水」と、お墓をみる「陰宅風水」があります。「陽宅風水」が、一般的に家の相の吉凶を判定する風水として広まったものです。

家相は日本生まれの思想

風水の思想は、奈良時代に中国から仏教とともに日本へ伝来したとされています。風水の考えが浸透する中で、日本の風土や習慣に合わせて、家相の思想が生まれました。家相は日本で生まれ、明治時代に九星気学の思想と合わせて整えられた学問です。

中国の陽宅風水と日本の家相では、全く違う考え方をする部分があります。家相は日本独自の発展をしたものだからです。中国風水や香港風水などでは、家相の考え方が無いため、その家に住むとどんな生活になるのかまで詳しく観ることができません。

風水で発展する良い土地を選び、家相で生活の質を向上させ人生を好転させると考えると良いでしょう。

家相とは日本生まれの思想

家相の考え方は中国伝来のものではなく、日本で生まれた思想です。

家相は方位や運勢の吉凶を見る「九星気学」の理論と、土地の形状で吉凶を見る「風水」の理論を合わせて、明治時代に園田真次郎氏により整えられました。

九星気学は、生まれた年月から割り出す本命星と月命星をもとに、その年の運勢を推測します。また、行動するときの判断に使用したり、移動方位の吉凶をみたりする占術であり、学問でもあります。

織田信長、上杉謙信、真田幸村など多くの国を動かした武将たちは、いつ攻めて、いつ退陣するかを判断する「兵法」として九星気学を学んだとされています。福沢諭吉も九星気学を深く学び、日本の繁栄に活かしてきました。

家相は九星気学を理解していないと鑑定できない

現在、日本で「風水」というと、「家相」のことを指している場合が多いように思います。

ここまで解説してきたように、着眼点が違う家相と風水ですが、いずれも自然と人間が共存共栄していくための知恵を集めたものであることは共通です。太陽の動きから影響される採光、気温、湿度など、両者とも基準が同じですから混同されてしまうのでしょう。

これは家相の元となった九星気学で用いられる図です。太陽の運行に合わせて「北を下、南を上」にしています。家相も風水も朝日が南へと昇る太陽を「発展の気を持つ光」として、東から南にかけての明るい光を家に取り込むことが大切だと考えます。特に東南は朝日が昇り昼間の太陽へと昇りゆくエネルギーに満ちた「発展の気」が強いため玄関を配置すると、家に発展的な良い気が入ってくるといわれるのです。

家相と風水は原点が同じで共通点が多く、違いや根拠が理解できない状態で広まってしまったことや、流派によって解釈が違うことも、どっちがどうか分かりづらいという混乱を起こした要因といえます。

ただ家相は、もともと九星気学と風水を融合して発展したものであるため、九星気学の理論が分からないと正しく家相を判断することはできませんので注意しましょう。

風水で良い土地を選び、家相で理想的な家の形と間取りに整えることが、住む家で運気を上げるポイントです。

家相から見える人生そのもの

「手相」「人相」「世相」「真相」など、「相」と付くものは、これまでの選択や考え方が良かったのか、悪かったのか、これからどうなるのかを推測するものです。

「家相」は家の形や間取りから、その家に住む人の考え方や人生の傾向を読み解いていきます。

家相の図面から何が見えてくるのか

家相を鑑定する際に私はまず、図面を見て「夫婦関係は良いか」「家族関係はどうか」「人付き合いはうまいか」「金運のある家庭か」「子供は問題を起こしていないか」「健康状態は良好か」などを、一通り推測し、相談者に確認します。

また、周辺の環境を風水の観点から「メンタルが落ち込みやすい」「コミュニケーションに問題がある」「ケンカ闘争が起きやすい」「金運がない」などを推測します。

家相の良し悪しや周辺環境から、その家に住む家族の人生感や抱える問題が見えてくるからです。

例えば、増築を何度も重ねたことで、とても複雑な構造になっている物件の鑑定依頼がありました。中古物件を探していたときに、依頼者はその家を一目見て「素敵な家だと思った」そうです。

しかし家相の観点から見ると、とても悪い物件でした。「家族関係にかなり問題がありませんか?」と伺うと、「その通りです」と複雑な内情を打ち明けられました。

またほかの事例では、図面上お金の使い方について問題がある家だと判断できる物件に住む方からご相談を受けた際に「家族全員が思いつきで物を買い、後から必要のない物を買ってしまったことを後悔する傾向にありませんか?」と伺ったところ、「どうして分かるんですか?」と驚かれました。

このように、家相や風水では、「周辺環境」「家の形状」「間取り」から、その家に住む一家の考え方、生活のクセ、人生の傾向などを読み解いていくことができます。

家相の良し悪しと住む人のエネルギー

なぜ、家相からこのようなことが分かると言えるのでしょうか。

また、同じ家を見たときに、「とても良い家だと思う人」と「住みたいと思わない人」の違いは、どこにあるのでしょう。信じられないかもしれませんが、環境を含めて、家と住人は同じ波長でひかれ合います。「この家が良い!」と思った理由は、普段から持っている思考にあるのです。

例えば、仕事をする場面をイメージしてください。散らかっていて、どこに何が置いてあるのか分かりづらい机で作業をするより、スッキリと片付けられていて、必要なものがすぐに見つかる机で仕事をするほうが効率がいいはずです。おそらく、職場環境を整えている人の方が、「仕事ができる人」と思われていることでしょう。もし散らかっていたとしても、すぐに片付けるはずです。

このように人生や仕事がうまくいく人は、自然と良い環境に身を置いています。また、作業しやすい環境に整えることを普段から意識していると思います。

一方でゴチャゴチャした机の人であると、普段からそうした環境に慣れているので何とも思いません。その結果、効率の悪さが仕事にも影響していきます。

環境は机の周りだけにとどまりません。部屋、家、立地など、範囲を広げて細かく見ていくと、自分や家族に環境が与えている影響が意外と大きいことに気づかされます。

また「交通量の多い繁華街で生活するのか」「のんびりとした自然豊かな場所で生活するのか」によっても、考え方や心の在り方、人生の流れが変わってくることは、容易に想像できることと思います。さらに、「田舎で暮らしたいと思う人」と「都会で暮らしたいと思う人」の人生観や思考が違うこともイメージしやすいでしょう。

このような理由から、家と住人は両者の思いと形が一致して、そこに住むに至っていると考えられるため、「どのような環境を選んでいるのか」「どのような間取りの家に住んでいるのか」を見ていくと、その家に住む人の考え方や人生の傾向、さらには、問題点まで推測できるのです。

環境と家を整えると人生が好転する

このように、「環境や家」と「生活や人生傾向」は一致します。そのため「住む家次第で人生が変わる」ことは、なんとなく理解できるのではないでしょうか。

つまり、いま自分の置かれている状況に不満がある場合は、住環境を変えることで人生に変化がもたらされ、理想の生活を手に入れることが可能になります。

また、いま住んでいる家の現状を把握することで、人生の傾向や問題点を認識し、対策を打つこともできるのです。言い換えると、「住んでいる家から、問題を広げている」ともいえます。

日頃、「頑張っているのにうまくいかないこと」「空回りしているような感覚」「なぜか巻き込まれてしまう人間関係のトラブル」「スッキリしない健康状態」などは、家や環境を見直して改善することで、問題解決できる可能性があるのです。

風水に鬼門の思想は存在しない

住宅メーカーで家づくりをしようとする際に、「風水で家相のアドバイスができます」といわれることがあると思います。

その際は、「九星気学も勉強したのか」と確認してみてください。「勉強していません」「九星気学とはなんですか」などの答えが返ってきた場合、その担当者は家相の根本を理解できていません。

また、「360度を均等に45度ずつ8つに区切った方位割り(均等な8等分)をした方位盤」を使ってアドバイスをされた場合も、そのアドバイスを信用してはいけません。家相の根拠が分かっていない証拠です。

家相の吉凶を正しく判断するためには、東西南北の4つの方位(四正)がそれぞれ30度、北東、南東、南西、北西の4つの方位(四偶)が60度に区切られた(均等でない8等分)方位盤を使う必要があります。

360度を12で割って、30度ひとつひとつに干支を配置したものです。

北は子、東は卯、南は午、西は酉が配置され、それぞれ1つの干支が入ります。北東、南東、南西、北西は60度ですから、2つの干支が担当します。北東は丑と寅、南東は辰と巳、南西は未と申、北西は戌と亥となります。

この考え方が基本にないと、鬼門の意味を説明できません。

家相における鬼門とは

北東は、丑と寅が配置されています。丑はツノを持ち、寅はキバを持つ動物です。地球上の動物はツノとキバのどちらかを持ち合わせていますが、その両方を持つのが「鬼」なのです。北東は丑と寅が担当している方位であり、両方の気を持つ(=鬼がいる方位)ととらえて、重要視されているのです。

一方で、中国の風水には、九星気学の思想が入っていないので、こうした鬼門の考え方は無いのです。

家相と風水は違うの?

「風水=鬼門」などのイメージがある方も多いと思います。しかし、このページで解説をしてきたように、家相にある鬼門の考え方は風水にありませんし、お墓の環境を良くしようという考え方は家相に無い思想です。

後悔しない家づくりをするためには、風水で環境と土地を確認し、家相で家の形状や間取り考慮しましょう。両者を混同せず、正しい思想を取り入れることで、本当に幸せになれる家が完成します。

まとめ

風水は中国で発展繁栄する良い気を持つ土地を探す方法として広がりました。その考え方が日本に伝わって、九星気学をベースに整えられたのが家相です。家相と風水では、方位の見方が違ったり、鬼門のとらえ方が違ったりします。

どちらも人間が自然と共存共栄するために伝承された知恵の詰まった学問です。両方の良い部分を取り入れた間取りにすることで、その家に住む人全員の運気があがる家になります。


家相(間取り)が変われば人生が好転する

これまで運がないと感じたり、どれだけ頑張ってもうまくいかなかったりすることはないでしょうか。

例えば仕事であれば、ブラック企業で働いていて収入や休みが少なく、労働時間が長いわりに給料は良くないことがあります。その場合、体が疲れ切っていて調子が悪いです。

また健康であれば、「脳梗塞になった」「がんと診断された」「ヘルニアになった」などを含め、何だか体調がすぐれないことがあります。

家族関係も大きな問題です。夫婦仲、息子、親、兄弟との関係が冷えていると家で過ごすプライベート時間が居心地の悪いものになります。他にも人間関係という意味では、上司・部下、同僚、ママ友、近所づきあいなども関わってきます。

こうした問題を抱えている人の家相・風水を私は長年みてきました。それらに共通することは、どれも家相が悪いということです。例えば仕事運のない人は「仕事で信頼されにくいとされる間取りの家」に住んでいます。健康に問題のある方は「健康を害しやすい家相の家」に住み続けています。

そこで家相(間取り)を変えれば、1年以内にそれまでの人生が好転するようになります。